民間企業の宇宙事業参入が相次ぎ、ここ数年で宇宙ビジネスは本格化しようとしています。宇宙ビジネスに必要となるロケットや衛星などの部品には「耐熱性」「低熱膨張」「軽量性」「高剛性」「高強度」など、厳しい耐久性が求められます。
この条件に合致する素材は、セラミックスです。
今回は宇宙ビジネスを支えるセラミックス技術を紹介します。
民間企業の宇宙事業参入が相次ぎ、ここ数年で宇宙ビジネスは本格化しようとしています。宇宙ビジネスに必要となるロケットや衛星などの部品には「耐熱性」「低熱膨張」「軽量性」「高剛性」「高強度」など、厳しい耐久性が求められます。
この条件に合致する素材は、セラミックスです。
今回は宇宙ビジネスを支えるセラミックス技術を紹介します。
目次
宇宙開発は国家主導から官民共創、そして民間へと変化しています。
かつて、宇宙開発は国家プロジェクトとして政府が主導でおこなうものでした。しかし、打ち上げロケット以外の衛星などの事業は、10年以上前から民間企業が商業利用で参入しています。
そして、近年ではロケット自体の打ち上げも民間企業がおこなうようになりました。 2020年5月30日にはアメリカの起業家であるイーロン・マスク氏によって設立され、NASA(アメリカ航空宇宙局)とも契約を結んでいるスペースX社が、民間企業として初めて有人宇宙飛行を成功させました。
さらに2021年7月20日には、米Amazon.com創業者であるジェフ・ベゾス氏の航空宇宙企業「ブルーオリジン」によるロケットが打ち上げられ、宇宙旅行に成功しています。
日本でも宇宙ベンチャー企業が登場しています。 実業家である堀江貴文氏が2013年に設立したIST(インターステラテクノロジズ)が、2019年5月に北海道からロケットを発射。日本の民間企業が単独で作ったロケットが、初めて宇宙空間に到達しました。
そして現在、2023年を目標として超小型衛星用ロケットの開発に取り組んでいます。
セラミックスとはもともと、ギリシャ語の「keramos」を語源としており、「粘土を焼き固めたもの」を意味しています。身近なものでは、陶磁器やタイル、便器、碍子などもすべてセラミックスです。
そして近年、ただ粘土を焼き固めて作るだけではなく、アルミナやジルコニア、強化アルミナ(ジルコニア添加アルミナ)などの精錬された非鉄金属材料パウダーを調合して成型後、それを焼結することでつくられた「ファインセラミックス」が登場しました。
ファインセラミックスは、セラミックスをさらに精錬し多種類の原料で製造されるものです。
その特徴としては、非常に緻密で硬く、地球上で最も硬い鉱物「ダイヤモンド」にも迫る硬さを持っていること、酸化して錆びることがないこと、その他の多くの金属よりも高い融点を持っていること、熱膨張が少ないことなどがあり、過酷な環境に耐えうる素材であるといえます。
宇宙空間は常に「宇宙線」と呼ばれる放射線にさらされており、温度差も激しい苛酷な空間です。このような激しい環境に耐えるため、打ち上げロケットや人工衛星などの素材には極めて強度が高い素材が必要ですから、ファインセラミックスがもってこいというわけです。
そこで現在では、耐熱性、耐蝕性、耐摩耗性、絶縁性などを持ち、強度の高いファインセラミックスが宇宙を飛行するロケットや衛星などに採用されています。
打ち上げロケットや人工衛星など、宇宙開発に活用されるファインセラミックスには、日本の技術が数多く採用されています。
JAXA(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)が打ち上げるロケットや人工衛星にはもちろん、NASAでも数多く使われています。
さらに近年ではファインセラミックスにその他の材料を組み合わせた複合材料も使われるようになっています。
JAXAが打ち上げた金星探査機「あかつき」でも、軌道・姿勢制御用スラスタにもファインセラミックスの複合材料が使用されています。
現在、世界における宇宙ビジネスの市場は、衛星サービス分野を中心に着実に拡大しています。アメリカの証券会社であるゴールドマンサックスとモルガン・スタンレーなどの統計によりますと、2040年の世界の宇宙ビジネスの市場規模は、現在の約3倍である100兆円を超えると見込まれています。
宇宙ビジネスは、打ち上げロケットや人工衛星など、直接、宇宙に向かう飛翔体だけを指しているわけではありません。
さまざまなインフラも含まれます。さらに、宇宙開発で活用された技術はIT分野やエレクトロニクス分野、ロボティクス分野など、地上の民生品へと転用されていきます。
そのとき、宇宙開発に活用された日本のセラミックス技術なども、大きく活用されることになるでしょう。
ファインセラミックスが利用されているのはロケットや人工衛星など、宇宙開発のための用途だけではありません。自動車やF1カー、スマートフォン、NAS電池、ヒーターの部品など、身近な製品にも使われています。
宇宙だけではなく、暮らしを支える身近な存在であるファインセラミックスに注目することで、地球の未来を考えてみませんか?
一般社団法人日本ファインセラミックス協会:
https://www.jfca-net.or.jp/ceramic.html
経済産業省:
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/seizo_sangyo/space_industry/pdf/001_05_00.pdf
JAXA 宇宙科学研究所:
https://www.isas.jaxa.jp/feature/interview/141.html