ディーセントワークの取り組み。若者も、障害がある人も女性も男性も、皆が働きがいのある人間らしい仕事を皆が持てる社会へ

SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の中にディーセントワーク推進が掲げられています。SDGsや働き方改革と深い関係のある「働きがいのある人間らしい仕事」を意味するこのディーセントワークに取り組んでいくことで、どのような社会が訪れるのでしょうか?

目次

ディーセントワークとは?

ディーセントワークとは、「働きがいのある人間らしい仕事」を意味しています。具体的には、「自由、公平、安全と人間としての尊厳を条件とした、全ての人のための生産的な仕事」となります。

このディーセントワークは、1999年に開催された第87回ILO(国際労働機関)総会で、フアン・ソマビア事務局長により提唱された概念です。2015年9月に国連でSDGsが採択されたことをきっかけに注目されるようになりました。SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」の中にディーセントワークが掲げられたためです。

日本では、厚生労働省により、「ディーセントワークと企業経営に関する調査研究事業報告書(厚生労働省)」が2012年3月に公表されました。このなかで、企業の従業員満足度とディーセントワーク達成スコアの間に相関があることが報告されています。

ディーセントワークを推進していくために

企業・組織がディーセントワークを実現していくためには、以下のような仕事や職場環境を提供していくことが求められます。

適正で働きがいのある仕事

雇用安定化や高齢者・障がい者の雇用対策強化などの取り組みはもちろんですが、一人ひとりの個性・特性にあわせた業務を提供し、従業員が能力を伸ばせるような環境を提供することが重要です。あわせて、仕事の成果を適切に評価する仕組みも必要です。

社会的保護が与えられる仕事

安全で健康的に働き続けられるような環境、ルールを整備することが重要です。労働時間や作業安全性を向上させるような取組みだけでなく、心理的安全性が高く風通しのよい職場風土を醸成するための活動も大切です。

従業員の権利が充実している職場

従業員が弱い立場で働かされることのないよう、労働組合を通して、会社と交渉や対話ができることが重要です。また、それぞれの従業員が生活にあわせた多様な働き方を選べるような制度や、必要な教育を受けることができる環境が求められています。

ディーセントワーク導入のメリット

ディーセントワークを導入することで、従業員とその企業・組織の双方にメリットがあります。

従業員満足度が向上する

多様な働き方を取り入れたり、業務・教育でやりがいや成長を感じることは従業員満足度の向上につながります。

人手不足の解消につながる

週休3日制度や短時間勤務制度などが活用できれば、子育てや介護と仕事の両立が可能になり、やむを得ず退職する人を減らすことができます。 多様な働き方が可能な職場は、従業員の募集時に人が集まりやすくなることもメリットです。また、従業員満足度の向上は、働いている人の定着率アップにつながります。

企業価値の向上

企業価値において、近年、非財務資本(人的資本や知的財産など、無形の企業資本)が重視される傾向にあります。非財務資本では、従業員満足度や、従業員が能力を向上させるための投資が非常に重要です。
従業員がやりがいをもちながら柔軟に働き、各々の個性や特性に合わせて能力を向上させることは、企業価値を向上させることにつながります。

海外・日本での取り組み

海外では日本に先駆けて既に取り組みが行われており、1970年以降オランダで推進された「オランダモデル」は有名です。これは”同一労働同一賃金制度“が、国の失業率の低下と経済状況の改善に成功した例としても良く知られています。パートタイムの労働者と正規雇用の労働者の時給や社会保険の差をなくすことで、ワークライフバランスを優先した働き方ができるようになりました。また、男女関係なく家事や子育てをしながら働くことができるようになったことも評価されています。※1

日本でディーセントワークが意識されるようになったのは、2019年4月から働き方改革関連法が施行されてからです。年間5日の有給休暇取得義務化や時間外労働の上限規制などによって、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)が取れた働き方が求められるようになったのをきっかけに、日本の企業も、ディーセントワークへと大きく舵を切るようになりました。

例えば国内の大手建材メーカーでは、「ゆとり休暇」と呼ばれる9日間の連続休暇や、任意の個人の記念日に休暇を取得できる「メモリアル休暇」を導入し、有給取得率が10%アップしました。また同社ではSNSを活用した「ワーキングマザーの会」が、子育て中の女性社員のよりどころとなっています。さらに親の介護などでやむを得ず退職した場合も、5年以内であれば復職を可能にしています。※2

また、国内の大手人材派遣企業では、アート事業部門に障がいのあるアーティストが在籍しています。それぞれの個性や才能に合わせた育成カリキュラムや研修を通してアーティストとしての従業員の才能を育てています。このほか、同社では、人材派遣の際に受け入れ先企業に対して、障がいの特性に応じたマネジメント教育をおこなうことで、定着率が大幅アップしました。

まとめ

ディーセントワークを実現し推進していくためには、従業員の多様性を尊重し、個人が成長していけるような職場環境を整えることと、あわせて成果を適切に評価する仕組みを作っていくことが大切です。
また、ディーセントワークが実現することは、従業員の心身・社会的な健康(ウェルビーイング)につながります。

参考

https://www.ilo.org/ja/regions-and-countries/ilo-ni-tsu-i-te/te-i-se-n-wa-ku
https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/kokusai/decentwork/
https://www.asahi.com/sdgs/article/14595611
https://nira.or.jp/paper/my-vision/2014/post-38.html ※1https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/—asia/—ro-bangkok/—ilo-tokyo/documents/publication/wcms_735052.pdf ※2

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