世界では脱炭素社会の実現に向け、CO2を排出しない新しい発電方法への転換が求められています。そこで、発電のためのエネルギー源を従来の化石燃料から再生可能エネルギーに切り替えていく必要があります。 再生可能エネルギーによる発電方法にはさまざまなものが登場してきていますが、太陽エネルギーを利用する太陽光発電は、クリーンエネルギーの1つとして日本を含め世界各国でも広く採用されています。
これまで、太陽光発電といえばシリコン半導体を採用した方法が主流でしたが、近年ではそのデメリットを克服したペロブスカイト太陽電池の開発が活発に行われています。
ぺロブスカイト太陽電池とは、どのような特長を持つものなのでしょうか?
太陽光発電とは?
太陽光発電とは、太陽の光エネルギーから直接電気を作る太陽電池を利用した発電方式のことです。日本の発電における電源構成内の再生可能エネルギーの中で、最も大きな割合を占めています。
資源エネルギー庁のデータによると、日本における発電量のうち12%が再生可能エネルギーとなっていますが、太陽光発電はそのうちの7.9%程度を占めています。
2012年にスタートしたFIT(固定価格買取制度)により日本国内で急速に普及しはじめた太陽光発電ですが、建物の屋根や壁などに設置できるため、新たに用地を設ける必要がないというメリットを持っています。
また、エネルギー源が太陽光であるので、設置する地域や場所に制限がないというメリットもあります。
そんなメリットを持つ太陽光発電ですが、デメリットも存在します。 現在、太陽光発電で主流を占めているシリコン系太陽電池は材料コストや製造コストが比較的高いほか、発電に使用されているシリコンは厚みがあり曲げることができないため、設置場所が制限されることもあります。
このようなデメリットを持つ太陽光発電が日本で普及した理由は、「FITという政府による補助金があったから」という側面があるといえます。
注目されるペロブスカイト太陽電池のメリットとデメリット
現行の太陽光発電のデメリットを覆す、次世代の太陽光発電が開発されています。
シリコンの代わりに灰チタン石(ペロブスカイト)を原材料として使用するペロブスカイト太陽電池を使った太陽光発電です。
フィルムなどの基板に溶液を塗布して製造することでコストを低く抑えられるほか、軽量で、薄くて柔らかく、折り曲げることができるので、設置場所を柔軟に選ぶことができます。そのため、耐荷重の低い屋根上に設置することも可能になります。
また、エネルギー変換効率も高いため、室内光におけるIoT機器の電力源としても見込まれています。
このようなメリットを持つペロブスカイト太陽電池ですが、現在はまだ生産が不安定となっています。今後の本格的な事業化に向けて、ペロブスカイト太陽電池生産の安定化が急務といえます。
ペロブスカイト太陽電池の事業化に向けた動き
ペロブスカイト太陽電池の事業化に向けては、国内の研究機関、企業での開発が進められており、政府も推進策を掲げています。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、2030年までに既存のシリコン系太陽電池並みの発電コストである1kWh当たり7円以下の達成を目標として、各民間企業の研究開発を支援しています。
なお、ペロブスカイト太陽電池の主要材料であるヨウ素の生産量は世界シェアの約3割を日本が占めています。事業化に向けて資源リスクが低いという理由からも、政府が事業化を後押ししているのです。
将来的には、EV(電気自動車)への車載も期待されています。これが実用化した暁には、エネルギーの大半を太陽光でまかなうことができる自動車が走るようになるかもしれません。ペロブスカイト太陽電池の事業化がその積み増しに大きく貢献していくでしょう。
またNEDOでは、ペロブスカイト太陽電池を含む次世代太陽電池の世界市場は2050年に5兆円と試算しています。
まとめ
現在の太陽光発電をさらに進化させるペロブスカイト太陽電池。普及後には現在の再生可能エネルギーにおける課題の多くが解決できているかもしれません。
参考
国立研究開発法人 科学技術振興機構:
https://www.jst.go.jp/seika/bt107-108.html
国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構:
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100959.html
経済産業省 「次世代型太陽電池の開発」プロジェクト:
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/green_power/pdf/002_03_00.pdf
NEDO:
https://www.nedo.go.jp/content/100937793.pdf