「生物多様性」と聞くと、ジャングルの多様な生き物や絶滅危惧種など、自身から遠い世界をイメージする方が多いかもしれません。しかし、「生物多様性」は、私たちの毎日の暮らしや企業活動の存続に直接関わる、非常に重要なテーマです。
本記事では、企業の視点から、生物多様性がなぜ必要なのか、企業に期待されていることやできることは何かを、Niterraグループの取り組み事例を交えながら解説します。

「生物多様性」と聞くと、ジャングルの多様な生き物や絶滅危惧種など、自身から遠い世界をイメージする方が多いかもしれません。しかし、「生物多様性」は、私たちの毎日の暮らしや企業活動の存続に直接関わる、非常に重要なテーマです。
本記事では、企業の視点から、生物多様性がなぜ必要なのか、企業に期待されていることやできることは何かを、Niterraグループの取り組み事例を交えながら解説します。
目次
生物多様性とは、長い地球の歴史の中で育まれてきた、生きものたちの豊かな個性とつながりのことです。具体的には、森や海などの豊かな環境(生態系)、さまざまな生きものの顔ぶれ(種)、そして同じ仲間でも一匹ずつ異なる個性(遺伝子)という、3つの重なりを指します。
動物や植物、昆虫、そして目に見えない微生物に至るまで、すべての生命は互いに影響を与え合いながら、絶妙なバランスを保って生きています。
私たちが普段何気なく使っている水や空気、食料、医薬品の原料などは、この豊かな生態系のバランスが生み出す恩恵によるものです。つまり、生物多様性保全とは、自然を守ることであると同時に、私たち人間が将来にわたって生きていくための基盤を守ることと同義なのです。
近年、気候変動と並んで「生物多様性の損失」が世界的な課題となっています。なぜ、今これほどまでに生物多様性保全の必要性が叫ばれているのでしょうか。
最大の理由は、私たちの社会経済活動が、自然の回復力を上回るスピードで生態系を破壊してしまっていることへの危機感の高まりにあります。私たちの毎日の食卓を彩る食材、衣服の原料、そして企業活動を支える水や鉱物など、あらゆるものは自然の恵みなしには成り立ちません。もし生態系のバランスが崩れれば、食料不足や価格の高騰、災害の激甚化を招き、私たちの当たり前の暮らしやそれを支える事業の継続が困難になるリスクがあります。
そのため、世界では今、「ネイチャーポジティブ(自然再興)」という考え方が注目されています。これは、自然を「減らさない」だけでなく「回復軌道に乗せる」ことを目指す動きです。企業に対しても、単に環境負荷を減らすだけでなく、事業を通じて自然を豊かにするアクションが求められるようになっています。

かつて、企業の自然保護活動といえば、本業とは切り離された植林活動や寄付といった「社会貢献」としての側面が強いものでした。
しかし現在、企業に期待されている役割は大きく変化しています。単なる社会貢献にとどまらず、原材料の調達から製造、廃棄に至るまで、ビジネスプロセスそのものに生物多様性への配慮を統合する「事業への組み込み」へとシフトしています。
事業活動そのものが自然環境に負荷をかけるのではなく、回復に寄与するものであること。それが、持続可能な経営の必須条件となりつつあります。
では、その「事業への組み込み」のために、企業は具体的に何ができるのでしょうか。まずは、自社の事業が「自然にどれだけ依存し、影響を与えているか」を知ることから始まります。
工場で使う水はどこから来ているのか、製品の原材料は生態系に影響を与えていないか、事業所の敷地は地域の生態系とつながっているか。こうした現状を把握し、可視化することが第一歩です。その上で、影響を最小限に抑える対策や、地域の自然本来の姿を取り戻す活動を進めていくことが、「できること」の具体策となります。

Niterraグループでは現在、生物多様性の保全活動をさらに進化させるため、事業・拠点と自然との関連性評価を進めています。その評価の過程で、当社製品のスパークプラグの主要生産拠点である「日特スパークテックWKSさつま工場(鹿児島県)」が、豊かな自然に囲まれた地域に位置していることがわかり、2025年度に敷地内および周辺の自然環境調査を実施しました。
調査の結果、さつま工場の敷地内およびその周辺は、驚くほど多様な生物が生息していることが判明したのです。

調査では、敷地内で200種以上の植物と50種以上の昆虫が確認されました。中でも特筆すべき発見は、「ハッチョウトンボ」の生息が確認されたことです。これは体長2cmほどの日本一小さなトンボで、生息できる環境が限られているため、近年数が減っている貴重な種です。さらに、工場できれいに処理した排水を放出している川でも、良好な河川環境の指標となる「ヤマセミ」の姿も確認されています。
なぜ、工場の敷地内にこれほど豊かな生態系が保たれていたのでしょうか。その理由は、工場の機能維持と生物への配慮を高いレベルで両立させてきた、現場の地道な努力にあります。具体的には、敷地内の緑地を適切に手入れして健やかな状態に保つとともに、製造工程で出る排水も徹底して浄化処理をおこなってから自然に還すなど、周辺の環境に負荷をかけない取り組みを積み重ねています。
これは、安全な操業という工場の役割を果たしながら、同時に生き物たちの暮らしにも配慮できることを示しています。日々の業務の中で、自然との境界線を丁寧に整えようとする現場一人ひとりの意識が、この豊かなつながりを支えているのです。
生物多様性保全において企業ができること。さつま工場の事例が示すように、地域の自然環境を正しく理解し、損なうことなく維持していくという地道な継続もまた、重要な保全活動のひとつと言えます。
私たちNiterraグループは、良き企業市民として、この豊かな自然を未来へ引き継ぐ責任があると考えています。今後もさつま工場のみならず、国内外の他拠点においても現地の自然環境の把握に注力し、課題が抽出された際には施策を推進していきます。そして、事業活動と自然環境が調和する未来を目指して、透明性の高い情報開示と具体的なアクションを続けていきます。
生物多様性保全は、持続可能な社会の実現に向けた取り組みであり、それがひいては自社の事業を守ることにもつながります。みなさんも、身近な場所にある「自然のつながり」に目を向けることから始めてみてはいかがでしょうか?