SDGsをはじめとして、人々の多様性(ダイバーシティ)が認められている現代の社会。とはいえ、無意識の思い込みや偏見はいまだなくなることはありません。
この無意識の思い込みや偏見をなくし、真の多様性を実現していくにはどうしたらよいのでしょうか。取り組みとその効果について探っていきます。
目次
アンコンシャスバイアスとは?
「アンコンシャスバイアス」(unconscious bias)とは、「無意識の偏見」を意味しており、自分自身でも気がついていない思い込みや捉え方を意味する言葉です。
このアンコンシャスバイアスは、過去の経験や価値観・知識・信念などをもとにして、自動的に判断や認知されるものです。そしてそれは、本人も気がつかないうちに何気ない発言や行動として現れてしまうのです。
ただし、アンコンシャスバイアスは誰しも何かしら持っているものです。ですので、アンコンシャスバイアスを持つことは自然ですし、外部に向けて発動されなければ何も問題はありません。
しかしアンコンシャスバイアスは意図せずに発動することがあります。
例えば、企業・組織において、社長やリーダーなど上の立場にいる人がこのアンコンシャスバイアスによる発言や行動を取った場合、部下の評価や昇進などに影響を与える可能性があります。従業員の育成にも響くケースもあります。
また、アンコンシャスバイアスによる決めつけや押しつけによって、職場内だけでなく、そのほかの人間関係にも影響が出る場合もあります。
アンコンシャスバイアスの具体例
アンコンシャスバイアスが生まれる原因には、主に以下のような6つのパターンがあります。
ステレオタイプバイアス
年齢や性別、職業、国籍など、属性によってステレオタイプな判断をすることをいいます。このステレオタイプバイアスが発動することで、多様性が理解されなくなります。
ハロー効果
親近感や好感を抱いた人の全てのことに対して好意的に捉えることをいいます。このハロー効果が発動することによって、本質を見極められずに、誤った評価を行ってしまうことがあります。
慈悲的差別
少数派に対して、あえて好意的で勝手な思い込みをすることをいいます。アンコンシャスバイアスといえないという人もいるかもしれませんが、無意識・無自覚な差別だといえます。
アインシュテルング効果
それまで慣れ親しんだ視点や考え方に固執して、他の視点や考え方を無視したり、あえて無いものとして振る舞うことをいいます。このアインシュテルング効果によって、これまでにない新しい斬新なアイデアが生まれにくくなってしまいます。
確証バイアス
自分の仮説や価値観、信念などの正しさを証明する情報だけを集めておいて、反証する情報や意見を排除してしまうことをいいます。この確証バイアスが発動することで客観的な事実でも否定されてしまうため、意思決定が間違ってしまうことがあります。
正常性バイアス
危機的な状況下にあっても、自分にとって都合の悪い情報やデータといった「異常」なことを過小評価や無視することをいいます。この正常性バイアスが発動することで、問題が発生しているのに「大丈夫だ」「問題ない」と考え、対処が遅くなってしまいます。
職場内でアンコンシャスバイアスを発動することで、さまざまな差別やハラスメントが生まれることもあります。
アンコンシャスバイアス解消への取り組み
アンコンシャスバイアスについて理解していなかったり、自分にはアンコンシャスバイアスがなく「フラットな視点を持っている」と思い込んでいたりすると、アンコンシャスバイアスを解消する取り組みをしようという考えに至りません。
そこでまず、アンコンシャスバイアスについて知り、自分にはどんなアンコンシャスバイアスがあるのかに気づくことが大事です。そして、チーム内や組織内にはどのようなアンコンシャスバイアスがあるのかを理解し、どのような影響や問題があるのか実態を把握していきます。
アンコンシャスバイアスの実態を把握したら、そのアンコンシャスバイアスを解消するために必要な仕組みづくりや、研修・トレーニングをおこなうことが重要です。
例えば、アメリカのあるオーケストラでは、音楽大学を卒業するのは女性が多いにもかかわらず団員はほぼ男性であり、女性の採用率は5%程度でした。
この状況に問題意識を持ったオーケストラが、採用時にブラインド・オーディションを実施したところ、女性の採用比率が46%に急増したのです。
この事例では、アンコンシャスバイアスに気付き、問題として向き合い、仕組みづくりをしたことで、1つのアンコンシャスバイアスを解消できたといえます。
まとめ
自分にはどんなアンコンシャスバイアスがあるのか、自分自身で気づくことが真の多様性への第一歩です。まずは自分自身の思い込みなどがないか、向き合ってみるようにしましょう。そして、どうすればそのアンコンシャスバイアスを解消できるか、考えてみてはいかがでしょうか?
参考
https://www.jtuc-rengo.or.jp/action/diversity/
https://www.hurights.or.jp/japan/aside/sdgs/2018/10/sdgs-1.html
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2021/202105/pdf/202105.pdf